第二十六話「双子対決」

とある雪山……そこには、ハーピー達ワルモン四天王が居て、サンダー達のもとへ送り込んだケルベロスの帰りを待っていた。
ハーピー「おっそいわね~、あのケルベロス。」
ハーピーは、そう愚痴る。
ブイモン「やっぱさ、あんな人面犬に頼んだのが良くなかったんじゃねぇか?」
ハーピーの愚痴に応えるように、ブイモンはそう言った。
ヴァンデモン「……人面犬? それは、あのケルベロスの事か?」
ヴァンデモンがそう問い返すと、ブイモンはそう言った。
ブイモン「だってさ、この世界のケルベロスって、人面犬に見えねぇか? ケルベロモンと違ってさ。」
ブイモンの言葉に、ハーピーとヴァンデモンは考え込む。
そしてハーピーは魔界のケルベロスを思い浮かべ、ヴァンデモンはケルべロモンを思い浮かべた。
……と、そんな事をしていると、ケルベロスが戻ってきた。
ハーピー「あら、帰ってきたわ。……噂をすればなんとやらってヤツね。」
ハーピーは、戻ってくるケルベロスの姿を認めるなりそう呟いた。
ヴァンデモン「……1人か? サンダーはどうした。」
ヴァンデモンは、戻ってきたのがケルベロスだけだと確認するや否や、そう問いかけた。
ケルベロス「それが……なかなか強情で……。」
ケルベロスは、申し訳なさそうにそう答えた。
ハーピー「……付いて来なかったって分けね。」
ハーピーの言葉に、ケルベロスは申し訳なさそうに頷く。
ブイモン「なぁハーピー。やっぱ人面犬じゃダメなんじゃねぇか?それよか、うちの長距離走者に任せた方が、良い働きすると思うぜ?」
ブイモンは、そう提案する。……長距離走者とは、恐らくロードランナーの事だろう。
ヴァンデモン「……嬉しそうだな、ブイモン。」
ヴァンデモンは、ブイモンの顔を見ながらそう言った。
……ブイモンは、嬉しそうな笑顔で、先ほどの台詞を言ったのだ。
ハーピー「仕方ないわね。……じゃ、タイムネットの世界とやらを、壊しに行きましょうか。」
ハーピーは、溜息混じりにそう切り出す。
ブイモン「マジで?……アレ、ハッタリじゃなかったんだ;」
ブイモンは顔を引き攣らせてそう言った。
 「待て!!
ハーピーがグレイに指示をしようとしたまさにその時、上空から声が聞こえた。
その声にワルモン達が振り返ると、そこには、紫色の光で身を包み、宙に浮かぶサンダーの姿があった。
ワルモン達「サンダー!!!?
ワルモン達は、サンダーの姿を確認するなり、声をそろえてそう叫んだ。
ハーピー「……来たわね、サンダー。」
ハーピーは、口元に笑みを浮かべてそう言った。
そんなうちに、サンダーはゆっくりと地面(雪の上?)に着地した。
ハーピー「飛んで火に入る夏の虫とは、まさにコノ事ね。……出てきなさい、ケルベロス!」
ハーピーがそう言うと、物(岩?)陰から、4匹のケルベロスが現れた。
サンダー「……やっぱりね。そんなトコだろうと思ったケドさ。」
サンダーはそう呟きながら、心の中で1つの心理を述べる。
「それでも、NWに危害を及ぼす恐れのある危険因子をほっとくワケにはいかない。」と……。
ハーピー「やっておしまい!!」
ハーピーがそう言うと、ケルベロス達はサンダーに襲いかかってくる。
サンダーはそれを避けるように、2,3歩ほど後ろへ跳び、ケルベロス達に大きな雷――『マハジオ』を浴びせた。

そしてその頃、ライガー達(+オルト)は、まだ崖を登っていた。
ギンギライガー「オルト!早く来い!!」
ギンギライガーは、自分達より下の方にいるオルトを急かすようにそう言った。
オルト「分かってるよ!!」
オルトは、そう答えて、少しスピードを速める。
ライガー「…もういい、ギンギライガー。アイツを待つことはない。俺達だけで先を急ぐぞ。」
ライガーは、オルトが疲れ始めていると悟って、ギンギライガーにそう言う。
ギンギライガー「だが……オルトはサンダーの戦っている場所を知らない。」
ギンギライガーは、困ったようにそう答える。
ライガー「だから何だ。アイツのペースに合わせていたら埒があかないだろう。」
ライガーは、そう言い放つ。……そんな話をするうちに、オルトがようやく追いついた。
オルト「お前らさぁ、そんなにとばしてて疲れねぇのか?」
オルトは、肩で息をしながらそう言った。
ライガー「当然だ。お前とは鍛え方が違う。」
ライガーは、オルトの言葉にそう答えた。
ギンギライガー「それに、サンダーが危ないかもしれないって時に、疲れてる暇なんて無いしね。」
ギンギライガーは、ライガーの言葉に続けて答えた。
オルト「そっか。……うん、兄弟ってそういうもんなんだよな。」
オルトは、頷きながらそう呟き、それを見た2人(匹?)は、先を急ごうと向き直る。
と、その時――
ライガー達のもとに、覚えのある匂いが届き、ライガー達の表情は一瞬にして強張る。
ギンギライガー「……これは……。」
オルト「血の匂い……だよな。」
ライガー「ああ。それも……サンダーのだ。」
ライガー達は順番にそう呟くと、さっきよりもスピードを速めて、雪山の頂上を目指す。

……その頃、サンダーは多勢に無勢の状態で、多少ではあるが、怪我をしていた。
サンダー「(まずいな……このままじゃ、債務を果たすどころの話じゃないや……)。」
サンダーは、敵の攻撃をかわしながら、心の中で呟いた。
その時、ケルベロスのうちの1人(匹?)が、サンダーの背後を取った。
サンダーがそれに気付いて振り返った時、青い雷がケルベロスに当たった。
サンダー「ライガーにいちゃん!ギンギにいちゃん、オルトロス!」
雷の飛んで来たほうには、ライガー達が居て、サンダーはそれを確認すると、そう言った。
オルト「大丈夫か?サンダー。」
オルトは、サンダーのもとに駆け寄って問う。それに、サンダーは頷いて答えた。
ギンギライガー「……かすり傷程度だな。」
ギンギライガーは、サンダーの傷を見ると、安心したようにそう言った。
ハーピー「あらあら、ライガーにギンギライガー。わざわざ昔の苦い思い出を、また味わいに来たのかしら?」
ハーピーは、クスクスと笑って嘲笑うようにそう言った。
その言葉に、ライガーとギンギライガーはハーピーを睨みつける。
……と、そうこうしているうちに、一同も到着した。
チョコ「サンダー……怪我してる……大丈夫?」
チョコモンは、サンダーの傷を見ると、心配そうにそう言った。
サンダー「ヘーキだよ、ただのかすり傷だって。」
サンダーは、笑顔でそう答える。
ハーピー「ふぅん……全員集合ってワケ?……まぁ良いわ。ケルベロス!全員やっておしまい!!」
ハーピーがそう言うと、ケルベロス達は、一斉に襲い掛かってきた。
アメ「……あのケルベロス達は、オレらが片付けといてやるからさ。」
グミ「サンダーは、グレイを助けに行ってきなよ~。」
アメモンとグミモンは、向かってくるケルベロス達と戦いながら、そう言った。
サンダー「アメモン、グミモン……うん。ありがと、じゃあおれ、行ってくるね!」
サンダーはそう言って、グレイの居る所へと向かう。
ハーピー「……グレイ!」
ハーピーがそう言うと、グレイはサンダーに標準を合わせ、大きな炎――『マハラギ』を放った。
サンダー「『アクエス』!!」
サンダーはそう言って、飛んでくる炎に向かって水流を放ってその炎を打ち消した。
グレイ「……『アギラオ』。」
グレイはそう言って、今度は大きな火の玉をサンダーに向けて放った。
サンダー「っ『ブフーラ』!!」
サンダーはそう言って大きな氷の塊を『アギラオ』に向かって放ち、それを打ち消した。
グレイ「『自獄の業火』。」
サンダー「『アクアウェーブ』!!」
2人は同時にそう言って、グレイは炎の波を、サンダーは水の波を放った。
そしてそれは互いのちょうど真ん中でぶつかって、炎と水は両方とも消え去った。
チョコ「……互角……?」
チョコモンは、サンダーとグレイの戦いを見て、そう呟く。
……一同とケルベロス達の戦いはいつの間にか止んでいて、
その場にいる全ての者が、サンダーとグレイの戦いを見守っていた。
偶然か必然か、3年前のあの日と同じように……。
サンダー「(互角って……どっからどー見たらそう言えんのさ!おれ思いっきりいっぱいいっぱいだし!!)」
サンダーは、チョコモンの洩らした一言が聞こえたらしく、心の中でそうツッコミを入れた。
ハーピー「じゃあ、同じ技で戦わせてみる?……本当に互角かどうかを確かめる為にねv」
ハーピーは、笑顔でそう言う。その言葉に、ゲンキ達とギンギライガーは、過去の事を思い出した。
3年前、ライガーとギンギライガーがこの地で戦った日の事を……。
サンダー「同じ技……ねぇ。……じゃあおれ、『ジオンガ』でやりたいな。」
「じゃあおれ、『ジオンガ』でやりたいな。」
サンダーは、いつも通りの明るい声でそう言ったが、何か策があるらしく、その瞳は自信の光に満ちていた。
ハーピー「『ジオンガ』ね……良いわ。」
ハーピーがそう言うと、グレイはその腕に電気を溜め始めた。それと同時に、サンダーも電気を溜める。
しかし、グレイは電気を溜めきる前に、素早くサンダーに近づいて、サンダーを切りつけた。
その光景に一同は驚き、サンダーは予想しなかった痛みに悲鳴を上げた。
ライガー「ハーピー……貴様ぁ!!!」
ライガーは、ハーピーを睨みつけてそう言う。
アメ&グミ「ずっり~!!反則だ~!!」
グレイの行為に、アメモンとグミモンはそう抗議の声を上げる。
ハーピー「甘いわね。“勝つためには手段を選ぶな”でしょ? ギンギライガー?」
ハーピーは、嘲笑うようにそう言う。
ライガー「……それは、元は俺がギンギライガーに教えた事だ。」
ライガーは、静かにそう反論する。
ハーピー「どっちにしろ変わらないわ。あなた達の教えで、サンダーは危機にさらされるんだから。」
ハーピーは、クスクスと嘲笑してそう言う。
サンダー「……それはどうかな。」
サンダーは、傷の痛みを振り払ってそう言う。
ハーピー「どういうことかしら?」
ハーピーは、そう問いかける。
サンダー「その教え、思い出させてくれてありがとう。お蔭で良い事思いついちゃった♪」
サンダーは、笑顔でそう言った。
それに、チョコモンはちょっと嫌な予感がよぎる。
サンダー「『カウントレス・アイシクル』!!」
サンダーはそう言って、足元から無数の(小さな)つららをグレイに放つ
しかし、それは飛び立つ時にサンダーの体をかすって傷をつけ、グレイにもかすり傷しか与えられなかった。
チョコ「あぁ……やっぱりリスク技使うし;」
チョコモンは、困ったように手を顔に当ててそう言った。
サンダー「やっぱり、『カウントレス・アイシクル』じゃイービルスパイラルは壊せないか……。」
サンダーは、そう呟いた。
グレイ「『アギラオ』。」
グレイはそう言って、サンダーに『アギラオ』を放つ。サンダーは、それを上に跳んで避けた。
――ピチャッ
着地したサンダーの足元で、水のはねる音がした。
サンダー「水の……音? そういえば、あちこちから水の匂いが……。」
そう、グレイの技は炎なので、その熱気で周りの雪が溶けていたのだ。
サンダー「(水…か。もう、賭けるっきゃないな……手段なんて、選んでる時間もないし……。)」
サンダーは心の中でそう呟くと、目を閉じて意識を集中した。
グレイ「ヴ~~~~~~……。」
グレイはそう唸って、サンダーに向かって一直線に走って行く。
……当然、途中に何度か水溜りを踏みながら。
その水がはねる音で、目の見えないサンダーにも、グレイの位置が明確に分かる。
……そして、グレイがサンダーの目の前の大きな水溜りに足を踏み入れた時、
突然水が盛り上がって、その水はグレイを捕らえた。
…当然の如く、グレイは驚き、その状態にサンダーはフッと笑みを浮かべる。
……そう、これはサンダーの作戦だったのだ。
サンダー「『ぜったい0ど』!!」
サンダーがそう言うと、グレイの周りにとても冷たい風が吹き、グレイを捕らえている水は氷に姿を変え、
それにより、グレイはさらに動きが取れなくなった。
サンダー「(後はこの技で……)『エナジレーザー』!!」
サンダーはそう言って口からビームを発射した。
そんな光景に、その場にいた全員は「そんな事できたのか?!」と、心の中でツッコミを入れた。
そしてそのビームは、見事グレイに命中し、そのビームに押されてグレイは空中に投げ飛ばされる。
――パキィ……ッ
そんな音が一同の耳に届くと共に、空から黒い破片が落ちてきた。
……そう、イービルスパイラルが壊れたのだ。
チョコ「やったぁ!イービルスパイラルが壊れた!」
チョコモンは嬉しそうにそう言って跳び上がる。
グミ「って~、それよりグレイ落ちてくるし~……;;」
グミモンの言葉に、一同が空を見上げると、確かにグレイは落下してきていた。
ゴーレム「ゴー!!」
ゴーレムはそう言って、グレイが落ちてくるであろう場所へと走り、グレイを見事受け止めた。
ギンギライガー「どうだ?ゴーレム。グレイは無事か?」
ギンギライガーは、ゴーレムのもとに駆け寄って、そう尋ねる。
ゴーレム「ゴー……大丈夫、グレイ無事。気、失ってる、だけ。」
ゴーレムのその言葉に、一同はホッと胸を撫で下ろした。
ゲンキ「サンダー!グレイ、大丈夫だってさ!!」
ゲンキの言葉に、サンダーは満面の笑顔で返した。
ブイ「……ヴァンデモン、ハーピー。どうするんだ?」
ブイモンは、ヴァンデモンとハーピーにそう問いかける。
ハーピー「一旦帰って、作戦失敗のご報告をしなくちゃね。」
ハーピーがそう言うと、ワルモン達は去って行った。


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